
名前と実体
DeepNude AI:名前は同じでも、動いているものは別
「AI」と付いたからといって同じ技術ではありません。公開されている説明の量そのものが、サービスごとに大きく違います。
短い答え
布の下を見通すモデルはありません。起きているのは別のことです。写真の一部の画素に印がつき、中身が捨てられ、空いた領域が生成モデルによってゼロから描き直されます。結果に現れる体は元の写真から取り出したものではありません。そのデータはそこに無いからで、形は他の大量の画像の統計から作られています。
名前の現在地はDeepNudeという名前の現在地に、同じ処理を指す別の呼び名は脱衣AIという呼び名との関係にあります。
中で動いているもの
拡散モデルと領域の描き直し
絵を描くのが拡散モデル、どこに新しい絵を出してよいかを決めるのが領域指定です。どちらが欠けても、元の写真にぴたりと収まる結果にはなりません。
拡散モデルの学習は逆さまに感じる手順です。完全な画像にノイズを段階的に加えて砂嵐にし、それを一段ずつ戻す方法をモデルが覚えます。生成では向きを反転させ、純粋なノイズから始めて少しずつ整えます。どの段階でも、写真に隠れた情報は読まれていません。読まれるのは周囲の見えている画素だけです。
安く速くなった理由は計算の場所にあります。Rombachらの潜在拡散モデルの論文(2022年)は、この処理を画素空間から圧縮された潜在空間へ移し、同じ論文で当時最良の領域描き直しも報告しました。圧縮がなければ、1枚いくらの商売は成り立ちません。
領域が決まる
置き換える範囲を体の形の検出で自動指定します。残りは固定されます。
中身が捨てられる
指定の内側に元の写真は残りません。出発点はノイズであって、薄くした布ではありません。
段階的に整える
推測とやり直しを十数回から数十回。導くのは指定の外側の画素と、サービスが用意した指示文です。
継ぎ目をなじませる
境界をぼかし、肌の色と光の向きを周囲に合わせます。1枚の写真に見えるのはこの工程のためです。
画像が出てくる
結果が元の大きさに戻されます。その大きさを決めるのはサービス側です。
つまり広告の言い方は最初の単語から外れています。あるのは、消された部分を汎用の描画エンジンが埋め直した画像です。生成と加工がどう混ざって語られているかはジェネレーターという言葉の使われ方で分けました。
壊れる場所
失敗には型があります
失敗の型は仕組みからそのまま出てきます。モデルは広くなめらかな面に強く、構造があって一貫していなければならないものに弱いのです。
| 指定の境界にあるもの | 結果に出るもの |
|---|---|
| 体に重なる物 | 斜めがけの鞄、リュックの紐、長い髪、組んだ腕。どれが手前でどれが奥かをモデルが当てることになります。 |
| 布の柄と皺 | ストライプ、チェック、和装の細かい文様。柄は境界で切られ、その切り口は拡大するとほぼ必ず見えます。 |
| タトゥー、ほくろ、傷跡 | 消えるか、違う場所に現れます。モデルは特定の人の肌の記録を持っていません。 |
| 指とアクセサリー | 指の本数が変わり、指輪が肌と融け、ブレスレットが途中で切れます。 |
| 斜めの姿勢と見切れた体 | 周囲の手がかりが少ないほど自由に創作され、体つきの比率が外れます。 |
| 解像度の低い写真 | 元より鮮明にはなりません。増えるのは画素であって細部ではありません。 |
この一覧は費用に直結します。失敗は画像が出来上がってから見えるので、1枚が1回で終わることはまれです。編集部が資料を読んだ6つのうち、やり直しを無償にしているところはありません。実費は単価に諦めるまでの回数を掛けたもので、その回数分の残高がどう減るかは無料クレジットの条件で扱いました。
4つの論点
変わったこと、変わらないこと
技術は2019年から入れ替わりましたが、判断を決める問いは同じです。誰がどこで計算し、いくらかかり、日本の法律ではどうなるのか。
GANから拡散へ
2019年のプログラムは別の系統でした。配布停止を伝えた2019年6月のViceの記事によれば、仕組みは敵対的生成ネットワークに乗り、狭い1つの作業のために学習されていました。その種のモデルは学習データに似た構図でしか動かず、外れた瞬間に壊れます。経緯は公開4日で止まった経緯にまとめています。
拡散は採算構造を変えました。土台のモデルは汎用で他社製、小さな調整と指示文で狭い作業に向けます。いまサービスが売っているのはモデルではなく、他人のモデルの上に載せた画面と待ち行列と課金です。2019年に1つだったものが1年で何十も現れた理由もここにあります。
形はどこから来るのか
指定の内側に現れるのは学習データの加重平均で、写真の人物の再現ではありません。結果が平凡に見えるのはそのためです。比率が平均に寄り、肌が均一になりすぎ、その人らしさが消えます。
逆の問いも重要です。送った画像が学習データになるのかどうか。Ainudezはプライバシーポリシーで、入力と出力をマーケティング、プロファイリング、第三者モデルの学習に使わないと述べています。WaveSpeedは逆に、送られたファイルを学習データとして挙げ、機微な情報を含みうることも認めています。どちらも自己申告で、外部監査はありません。
確かめられない主張
この種のトップページに並ぶ約束は3つで、どれも外から検証できません。写実的な仕上がり、写真は保存しない、最高のモデル。1つ目に単位はなく、2つ目は他人のサーバーを覗けず、3つ目はたいてい競合と同じ第三者モデルを指しています。
確かめられるのは地味なほうです。登録前に料金が読めるか、法人名があるか、削除期限が日数で書いてあるか、支払いに異議を申し立てられるか。この4問に6つを並べたものが6つのサービスの横並び比較です。
創作でも罰は残る
体が架空だという事実は、日本の法律の前で誰の立場も良くしません。刑法175条が問うのは記録の由来ではなく、それを他人に届く場所へ置いたかどうかだからです。モデルが何から画素を組み立てたかは、条文の要件に一度も出てきません。
実在する人を撮影した記録が絡む場合は別の条文が重なります。どれがどの場面で動き、法定刑がいくつなのかは刑法175条と性的姿態撮影等処罰法で条文ごとに整理しました。評価されるのはその人に対して何をしたかであって、ファイルの技術的な出来ではありません。
よくある質問
仕組みについて聞かれること
根拠は2つだけです。誰でも開ける技術文献と、各サービスが自分について公開している資料です。
本当に服の下が見えているのですか
いいえ、物理的に不可能です。写真は表面で反射した光しか記録していません。モデルは指定した領域を消してノイズから描き直すので、出てくるのは周囲と噛み合う創作であって、ファイルに隠れていた情報ではありません。
同じ写真で2回試すと結果が違うのはなぜですか
処理がランダムなノイズから始まるからです。出発点が違えば整え方の経路も変わります。探している単一の正解はなく、だから仕上がりの改善はいつも新しい費用になります。
結果は本物の写真と見分けられますか
境界を拡大すればしばしば分かります。切れた布の柄、本数の合わない指、向きの揃わない影、消えたタトゥー。ただし解像度が低いほど痕跡は薄れ、スマートフォンの画面では見えないものも多くあります。
通信なしでスマートフォンの中だけで動きますか
いま出回っている形では動きません。拡散モデルは普通のアプリの容量をはるかに超えるメモリと記憶領域を必要とします。端末内で処理すると称するものも画像をサーバーへ送っていて、ファイルの大きさ自体がその主張を崩します。